ー甲斐健の旅日記ー

佐賀城本丸(歴史館)/藩政の改革と近代化を成し遂げた鍋島直正の居城

 戦国時代、佐賀(肥前地方)は、藤原秀郷(ひでさと:平将門の乱で活躍した武将)の流れを汲むとされる龍造寺氏が戦国大名として支配していました。しかし、天正12年(1584)、当主の隆信が島津・有馬連合軍に敗れて戦死すると、龍造寺氏は急速に力を失っていきました。そして、龍造寺家家老だった鍋島直茂(なおしげ)が実権を握りました。これが肥前佐賀藩の始まりとされます。直茂は、龍造寺氏の居城だった村中城を改修・拡張して新たな居城の築造を計画します。この計画は、嫡男の勝茂の代で完成しました(慶長16年:1611年)。内堀の幅80m、天守は外観四重、内部五階建て(高さ38m)の壮大な城だったといいます。

 しかし、佐賀城は何度も大火に見舞われ、その都度再建されてきました。現存する鯱(しゃち)の門(表門)は、天保6年(1835)の大火の後、天保9年(1838)に再建されたものです。この時本丸御殿も再建され、明治維新後も裁判所や小学校として活用されていましたが、明治7年(1874)に起きた佐賀の乱の戦場となり焼失してしまいました。現在見ることのできる本丸御殿(佐賀城本丸歴史館)は、幕末(天保年間)に築造された姿を平成16年(2004)に再現したものです。 なお、佐賀城は「日本の名城100選」(財団法人日本城郭協会選定)に選ばれています。

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 佐賀城本丸歴史館は、JR佐賀駅南口を出て駅前の大通りを2kmほど南下したところにあります。佐賀駅バスセンターから、県庁舎・佐賀城跡線(⑥番)に乗り「佐賀城跡前」で下車するか、平松循環線または広江・和崎線(㉔㉕㉖番)で「博物館前」で下車します。

 佐賀城跡は佐賀城公園となっており、その中に鍋島閑叟(かんそう:直正)の銅像や、鯱(しゃち)の門、続櫓(つづきやぐら)などの遺構および佐賀城本丸歴史館があります。公園内に入ってまず目につくのが、台座も含めて高さ8.5mにも及ぶ巨大な鍋島閑叟(第10代肥前藩主)の銅像です。閑叟の銅像は、大正2年(1913)に生誕100年を記念して一度建造されましたが、第二次世界大戦時の金属供出命令によって撤去され、そのままになっていました。しかし、平成29年(2017)3月、閑叟生誕200周年を記念して、再建されました。

 鍋島閑叟は、天保元年(1830)に17歳で10代藩主になると、破綻寸前だった藩財政を立て直すための改革に着手しました。周囲の反対を押し切って役人の数を五分の一に削減したり、借金の8割を放棄し残りは50年割賦にするなど、強引な手法で財政再建を推し進めました。一方では、石炭、磁器、茶などの産業育成に努め、交易を盛んにして財政の立て直しに成功しました。さらに藩校である弘道館の拡張や医学校、海軍学校の創設によって、人材育成に努めました。身分にかかわらず、有能な家臣たちをどんどん重用したといいます。財政再建に成功した肥前藩は、欧米列強の東アジア進出に対する防衛力強化のため、西洋の軍事技術の導入を図り、日本初の反射炉(鉄の溶融炉)を建設して、アームストロング砲などの最新式の大砲や銃を自前で製造する技術を確立しました。さらに、蒸気船の基地として三重津(みえつ)海軍所を創設し、蒸気船(凌風丸)までも自前で製造する技術を確立しました。閑叟は、医療分野でも近代化をはかりました。それまで不治の病とされていた天然痘を根絶させるために、オランダから牛痘ワクチンを輸入し、予防接種を普及させたといいます(実際長男の直大に試したと伝えられる)。

 佐賀城本丸歴史館の手前に鯱の門があります。天保9年(1838)に建造された遺構です。鯱の門は、二重二階の櫓門(やぐらもん)に二階建ての続櫓が組み合わされています。二階部分は、弓矢などを保管する倉庫兼防衛のための弓矢の発射台です。入母屋造(いりもやづくり)本瓦葺(ほんがわらぶき)の建物です。大棟(おおむね)の南北に青銅製の鯱が飾られていることから鯱の門と呼ばれています。鯱の門の近くに天守台があります。佐賀城の天守閣は、享保11年(1726)の火災で焼失して以降は再建されず、現在は石垣が残るだけです。

 佐賀城本丸歴史館は、天保9年(1838)に鍋島閑叟によって再建された佐賀城本丸の一部を忠実に復元した(平成16年)建物です。広さは2,500平方メートルあります。建物内部には、45mにわたる畳敷きの廊下や一之間から四之間まで合わせて320畳の大広間などが再現されており、当時の肥前藩(佐賀藩)の隆盛ぶりがうかがえます。館内は博物館にもなっており、佐賀城に関する展示、幕末から維新期に活躍した佐賀出身の人々の業績の紹介などが、ジオラマやレプリカおよび映像によって紹介されています。とても見ごたえのある歴史館だと感じました。



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