ー甲斐健の旅日記ー

室戸岬/荒々しさと雄大さを兼ねそなえた自然の造形美

 室戸岬(むろとみさき)は、高知県東部に位置し、太平洋に三角形に突き出た地形の頂点の岬です。海水による浸食でつくりだされた奇岩や縦じま模様の堆積層などの景観は、自然の壮大さを実感させてくれます。また、一年を通して温暖な気候のため、亜熱帯植物が生い茂る地でもあります。この地域は室戸阿南海岸国定公園に指定されるとともに、2011年にはユネスコの世界ジオパーク(世界的に貴重な地質、地形、火山などの地質遺産を複数有する自然公園。世界遺産の地質版)に認定されています。

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 室戸岬へは、公共の交通機関ならばバスを利用します。土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線の安芸(あき)駅または奈半利(なはり)駅から室戸・甲浦行に乗り、「室戸岬」で下車します。所要時間は、安芸駅からは1時間25分、奈半利駅からは59分です。以下に室戸岬周辺の観光スポットを紹介します。

月見ヶ浜、潅頂(かんじょう)ヶ浜

 室戸岬の突端の東側が月見ヶ浜と呼ばれています。中秋の名月が海から昇るという絶好の月見場所だそうです。岬の突端周辺は、潅頂が浜と呼ばれます。この付近には、タービダイト層と呼ばれる縦じま模様の地層が随所に見られます。海底に堆積した砂や泥が層を形成し、それらが地殻変動などで地上に現れたものです。自然の造形物として、荒々しさと雄大さを感じさせてくれます。海岸沿いにつくられた遊歩道から西の方角に目を向けると、人の顔(横顔)をした巨大な岩が見えます。地元の人に聞くと、「あれは、弘法大師さまが悟りを開こうと念じておられる御姿だ」といいます。ところが、遊歩道を歩いて大岩の近くまで来て上を見上げてみると、その表情が一変したように感じます。再度地元の方に聞くと、「悟りを開かれて、緊張から解放された御姿に変わった」といいます。一度確認してみてはいかがでしょうか・・・。

 室戸岬周辺には亜熱帯植物が植生していますが、アコウの木はその代表的なものです。この木の特徴は、枝が触手のように横に伸びて根元が岩にしがみつくように広がっていることです。この地は台風だけでなく常に強風が吹き荒れる気候のため、その風に耐えられるように成長していくのだそうです。たくさんの触手を持ったモンスターの様に、今にも動き出しそうな感じです。

中岡慎太郎像

 室戸岬の先端の国道沿いに、巨大な中岡慎太郎像があります。像の高さは5.3m、総重量7.5t、台座まで含めると高さは13.5mになります。台座には、陸援隊隊士で慎太郎の片腕だった田中光顕(みつあき)の書で「贈正四位 中岡慎太郎」と刻まれています。中岡慎太郎は、坂本龍馬と協力して薩長同盟や薩土盟約成立のために奔走し、明治維新への道を拓いた幕末の英雄の一人です。この像は、昭和10年(1935)、本山白雲(もとやま はくうん:桂浜の坂本龍馬像の製作者、高村光雲の門弟)によって建立されました。この中岡慎太郎像も、桂浜の坂本龍馬像同様、先の大戦中に公布された「金属回収令」を免除され供出を免れました。明治維新の功労者の銅像をつぶすなんて、さすがにできなかったのでしょう。

恋人の聖地

 中岡慎太郎像の横かららせん状の階段を上ると、展望台にたどり着きます。ここからの眺めは絶景で、岬沿岸から太平洋を180度以上のパノラマで見渡すことができます。この展望台は、「恋人の聖地」と呼ばれています。「恋人の聖地」は、ほかに二か所あります。一つは室戸岬灯台展望台、もう一つはスカイライン展望台です。

御厨人窟(みくろど)

 中岡慎太郎像から海岸沿いに走る国道を東に1kmほど行った左手に、弘法大師が修行したと伝えられる洞窟があります(最寄りのバス停は「岬ホテル前」)。御厨人窟(みくろど)と呼ばれています。弘法大師はこの地で虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ)への祈りを唱え続け、ある日突然、菩薩の化身である明星が口から体内に入り、悟りを開いたと伝えられます。このとき、洞窟内から見える空と海が、今までとは全く違って光輝いて見えたことから、「空海」と名乗るようになったといいます。まさにこの地は、パワースポットそのものということでしょうか。ここには二つの洞窟があります。向かって左の鳥居が建っている方が居住スペースとした御厨人窟で、奥には「五所神社」と呼ばれる小さな社が祀られています。右手にある洞窟は神明窟と呼ばれ、修行をするスペースです。耳をすますと、洞窟内に滴る水の音や室戸岬に打ち寄せる波の音が聞こえてきます。この「室戸岬・御厨人窟の波音」は、環境省が定める「残したい“日本の音風景100選”」の一つに登録されています。なお、洞窟内へはヘルメットの着用が義務付けられています(手前の事務所で貸してくれます)。



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